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COVID-19の最新の傾向と治療薬(論文紹介)

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COVID-19(新型コロナウイルス感染症)について新たな知見がどんどん増えてきています。

当ブログでは以前論文紹介として記事を一つあげていますので、知見をアップデートしておこうと思います。

starwave-disneyandtravellife.hatenablog.com

 

 目次

 

[COVID-19の文献数]

医学系論文の検索エンジンPubMedで[COVID-19 検索]すると現在1000件を超える結果がヒットします。(原著だけでも既に500件)

有名雑誌は特設サイトを設けているところがあり、以前紹介したThe Lancetの特設サイトがなかなかいいので今回もLancetベースにアップデートしておきます。

各誌特設サイトへはGoogle Scholar(https://scholar.google.co.jp)トップページよりアクセスできます。

(主となる引用文献については下図内に記す)

The Lancet COVID-19 Resource Centre

https://www.thelancet.com/coronavirus?dgcid=kr_pop-up_tlcoronavirus20

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The Lancet COVID-19 Resource Centre

[コロナウイルスとは]

www.who.int

[疫学]

  • 潜伏期間:0-24日間で平均5日、中央値3日
  • 罹患者年齢:中央値 56.0歳
  • 死亡者年齢:中央値 69.0歳
  • 性差:男性が6割とやや多い
  • 致死率:中国国内で3.6%、中国以外の国では1.5%(特定日より14日前に感染した罹患者数を分母とする)
  • 基礎疾患: 糖尿病、高血圧、心疾患など(今回は喫煙歴もリスクに追加)
  • 死亡者の約7割は何かしらの基礎疾患を有していた
  • 60歳以上が感染ハイリスク群である一方、小児はローリスクもしくは感染しても軽微or無症状である
  • 罹患者は平均2.2人に感染伝播している可能性がある

[臨床経過]

感染初期は風邪症状に似た発熱、咳、筋疲労(感染第1日目より)

肺炎症状や呼吸困難感は感染第7日目程度で見られることがある

重症例の場合、感染後第10日目程度で敗血症、直後にARDSなど呼吸器障害が見られる

(敗血症は全死亡者、生存者では4割と高頻度)

転帰は治癒・死亡に関わらず3週間ほどを要する

(下図参照)

[スクリーニングフローチャートなど]

スクリーニングフローチャート、感染のタイムライン、および家族規模のクラスター感染の実例がLancetよりフリーで転載可能でしたので以下に示します。

https://www.thelancet.com/coronavirus?dgcid=kr_pop-up_tlcoronavirus20


Read the full article: Therapeutic and triage strategies for 2019 novel coronavirus disease in fever clinics

現在中国・武漢市で行われているスクリーニングのチャートです。

風邪症状が見られる場合、まずSpO2が93%以上あるかどうか調べます。

(正常値は大体98~100%です。97%下回ると結構息苦しいとのこと)

ここでSpO2<93%の場合即重症管理となります。

続いて、発熱の確認・血液検査となります。

ここで引っかかると、CT検査となり肺炎症状があると隔離の上やっとPCR検査となります。

 

日本・大阪の病院の症例報告によると、クルーズ船乗客のように先にPCR検査を受けて陽性と判定され搬送されたものの退院まで無症状の感染者もおり、この方々の共通の異常所見としては、CRP上昇・CTで軽度肺炎所見くらい(北島ら 日本感染症学会HP 2020)。

発熱と同時に血液検査をする上記フローチャートの場合、次のステップに進む指標にCRPが明記されているので、無症状感染者であっても漏れる可能性は低くなるでしょう。



Read the full article: Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China



Read the full article: A familial cluster of pneumonia associated with the 2019 novel coronavirus indicating person-to-person transmission: a study of a family cluster

[治療方法] 

依然として対症療法がメインで、基本的に抗菌薬の投与をしています。

抗ウイルス薬についてはHIV治療に使われるプロテアーゼ阻害剤が有効との報告があり、本邦では日本感染症学会が以下のような指針を出しています。

・適応患者

概ね50歳以上で低酸素血症を呈している感染者、または基礎疾患を有している感染者

年齢にかかわらず呼吸不全の増悪が見られるもの

・使用する抗ウイルス薬

ロピナビル・リトナビル(HIV用プロテアーゼ阻害薬)

ファビピラビル(新規インフルエンザ治療薬・RNAポリメラーゼ阻害薬)

・その他の薬剤

レムデシビル、ヒドロクロロキン、インターフェロンなどの薬剤での治療報告は上がってきているが、使用に関する指針の記載なし

新型コロナウイルス感染症|感染症トピックス|日本感染症学会

 

[抗炎症薬の使用について]

WHOは2020年3月17日に抗炎症薬(一般名)イブプロフェン・(商品名)バファリン

についてCOVID-19の増悪につながるとして使用を控えるよう声明を出しました。

これはLeig.F et al. Lancet 2020 の中で述べている仮説を基としたもので、科学的根拠が立証された現象ではありません。

SARS-CoV2は肺や肝臓などに存在するACE2受容体(血圧の調整をする酵素)を介して上皮細胞に侵入することがわかっていますが、イブプロフェンや2型糖尿病治療薬の作用機序としてこのACEを活性化、つまりSARS-CoV2を体内に侵入されるチャネルを増やしてしまう可能性がある、だから万全を期して控えた方がいいのではないか、という内容です。

今回名指しされたイブプロフェンは解熱鎮痛薬の中の酸性NSAIDsという種類のプロピオン酸系に分類されるのですが、同じ系の中には有名なロキソプロフェン(商品名:ロキソニン)があり同様に注意が必要です。

しかしもっというとPG合成阻害→ACE活性はNSAIDs全般に共通するものですので、一般的な併用注意も鑑みてボルタレンセレコックスソランタール(いずれも商品名)も注意した方がいいものと考えます。

一方でWHOが言っている通り、非NSAIDsのアセトアミノフェン(商品名:カロナール、アンヒバなど)は平時においても比較的安全に使える鎮痛薬(抗炎症作用はない)ですので、疼痛・発熱の時に自己判断で服用したい場合はこちらをお勧めします。

ま、感染した方で自己判断で何かお薬を服用される方はまずいないと思いますが。

NSAIDsのわかりやすい分類表が熊本大学薬学部の育薬データベースにて公開されていますので、お手元の解熱鎮痛薬がなんなのか気になる方は参照ください。([NSAIDsの分類]の章をクリックするとPDF形式で開きます。)

育薬に活用できるデータベース | 熊本大学薬学部 臨床薬理学分野

[感染予防]

感染予防策として、最も簡便かつ最大の効果を発揮するのは何と言っても「手洗い」です。

小まめに、しっかりと。そして不必要に、目・鼻・口を触らないこと。

マスクしていたら大丈夫、なんて幻想は捨ててください。

マスクしてても罹患する時はするし、死ぬ時は死にます。

ちなみにマスクのフィルタリング能力はサージカルマスクで5μm以上です。

COVID-19のサイズは先述の通り0.1μm、細菌ですら約1μmですので余裕ですり抜けられます。(ウイルスと細菌は全く別物です。)

WHOによるとくしゃみ・咳をする場合はティッシュや衣類で防御し、飛散物が付いた物は速やかに処分しなさい、と書いてあり、「マスク(face mask)」とはどこにも書いてありません。

詳しい手技・対応については、東北医科薬科大学が発行している「新型コロナウイルス感染症の市民向け感染予防ハンドブック」を是非、参照・拡散してください。

<追記 2020/03/16 16:00>「新型コロナウイルス感染症 ~市民向け感染予防ハンドブック」を発刊しました | 東北医科薬科大学病院

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このハンドブックの内容は呼吸器感染症予防に広く活用できると思いますので、ぜひ。

現在SNSでも著名人がHow to している手洗い方法は手術室でスタッフがやっているものとほぼ同じですので、時間かかるし面倒ですが、外科医ごっこしている気分で楽しんでみてください。

[考察1]

ランセット掲載の論文を見る限り、初期の報告よりも致死率の低下と、ボリュームゾーンの上昇が顕著に見られています。初発症状や臨床経過については大きく変わっていない印象。

感染する年齢・性別についてはよりハイリスク群が絞られてきていて、各種指針・報道の通り50歳以上の方、特に65歳以上で基礎疾患を有している方の感染・重症化リスクが高いので引き続き注意が必要そうです。

気になる妊婦さんの感染状況ですが、中国で周産期の妊婦感染者9例をまとめたレポートによると、全員軽症のまま治癒、胎児への影響はなく全員無事出産(全例帝王切開)し、垂直感染も見られていないようです。(Chen,H et al. Lancet 2020)

症状の程度についてですが全体の8割、40歳以下の感染者のほとんどが軽症感冒症状程度)のうちに治癒していることが報告されていて(WHO)、多くの働く世代にとってそれほど脅威ではない可能性も示唆されます。

致死率については、中国国外で1.5%(日本:1% 厚労省より)となっていますが、分母の設定があまりよくなく、真の致死率について決定づけるのは時期尚早と言っていますが、1%を切るとの見方が多いようです。(David.B et al. Lancet 2020)

この死亡者の内訳ですが、高齢・基礎疾患有がほとんどで(73%)、

30歳以下の死亡者は全体の0.2%ほど。(China CDC Weekly,2020,2(8):113-122)(Yuanyuan.D et al. pediatrics 2020 pre-publication)

若い世代の感染者が死亡転帰した理由がわかる論文はまだ見つけれていなくて、非常に気になっているところではありますが、本邦の場合現時点で死亡者全員が高齢(基礎疾患有無については公表されていないケースも多く不明)です。

本邦は特に重症化・死亡する層がかなり限定的なので、各種整備を早急に整えてローリスク群の層については恐れず、かつ適度に危機感を持った上で通常の経済・教育活動に戻していくことも重要なことかと思います。

[考察2]

WHOの統計によると、発生源の中国については罹患者のほとんどが武漢市を含む湖北省に集中しているも、既にピークアウトしており今月に入ってからの新規感染者は減少が続いている。

一方で欧州全域(特にイタリア)での感染拡大が急速で感染の中心が欧州に移動していることが示唆される。

この統計で日本を見ると、近隣諸国および欧州と比べて人口規模で見て感染者の数は非常に抑えられているように見え、これが真の値であれば素晴らしいことで2ヶ月以内でのピークアウトも期待したいところです。(日本は国民皆保険だし)

www.who.int

[考察3]

以下はLancet掲載論文ではなく、国立感染症研究所によるダイヤモンド・プリンセス号での事案についての報告に基づいた個人の見解です。

今年の流行語にもなりそうな勢いの「クラスター」ですが、本邦での先駆け?とも言えるのがこのダイヤモンド・プリンセス号の事案。(厳密には国内事案ではない)

3711名の乗員乗客が長期間、集団として隔離されており、この中で感染した者が約620名、死者7名。(感染者の半数は無症状、死者は全員70歳以上で基礎疾患有)

特筆すべきは、年齢・基礎疾患の有無に関わらず全員が旅行・仕事ができるほど健康な状態であった(はず。)こと、そしてほとんどがウイルス検査を受け、罹患者は速やかに治療を受けていること。

つまりこの集団においての感染力、罹患率、致死率etcというのはCOVID-19の疫学としてかなり正確と考えることもでき、今後の対策のヒントとして重要と考えます。

(何を目的とするかにもよりますが、重症化・致死率の低下であれば、休校や飲食店の休業ではなく、高齢者施設の隔離やボリュームゾーンの世代が集まる施設の閉鎖(スパ・ジム、雀荘など)してそれらの世代を濃厚接触させない措置を早期にするべきだった、とか。)

現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例【更新】

 

[総括]

Lancetの報告を中心に前記事の内容をさらっとアップデートしてきました。

まだ全貌は見えませんが、日々戦っている医師・研究者のおかげで日に日に傾向と対策がわかってきており、一般の感覚として初期に比べて安心感が増す要素が増えているようにも思えます。

マスクについては、個人はともかく医療機関でもマスクの入荷困難は深刻です。

世界的にはマスクの供給は医療機関最優先ですが、医療機関での需要増加のためやはり追いついていません。

また、白血病やガン治療を受けている方は著しく免疫が低下していてマスクをしないと原疾患の増悪や敗血症のリスクが高まります。

世間体を気にするよりも本当に必要としている方が安心して職務を全うor生活できるような、優しい社会になることを望みます。

(繰り返しになりますが、感染予防においてマスクの効果を認める根拠はありません。また、洗濯すればマスクの形としては何度でも使えますので1~3枚/1人程度あれば十分です。)

 

一般の方については今本当にするべきことはメディアやSNSの切り取り方を真に受け怯えることではなく、いつも通り風邪引かないように心身ともに健康的な生活・体作りをすることが今回に限らず様々な疾病に対しても有効かと。

 

普段表に出ていないだけで、本邦の感染者数・致死率においてCOVID-19より高い感染症はたくさんありますから。(ウイルス感染症、細菌感染症共に)

例えば細菌感染症として抗菌薬が効かない、「薬剤耐性菌」感染による我が国の死者は年間約8000人以上。

ウイルスと違い、自身の体内で勝手にできてしまう可能性もあるので、かなり脅威です。

今後も増え続けると予測されており、耐性菌を生まない薬の開発が急務となっています。

 

なお、当ブログでは大きな動きがない限りCOVID-19関連のフォローアップはこの記事までにしておこうと思います。

[その他のリンク:日本語訳済!]

こちらのリンクは救急医向けのサイトでより臨床的ですがエビデンスベースで今どうしているか、何が最適かが「日本語」で翻訳されているのでスムーズに理解できて良いです。

今回紹介した内容が総説集としてより詳細に書いてありますのでおすすめ。

随時アップデートされるようです。

www.ebmedicine.net

 

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