連日話題になっている新型コロナウイルス(2019-nCoV)
当ブログでは上海ディズニーランドがこの影響で一時休業していることを伝えています。
この2019-nCoV、なんせ新型なので「よくわかってない」ことだらけ。
そんな中、1月24日前後に世界五大医学誌のTHE LANCETやNEJMなどに何本か2019-nCoV関連の報告が上がってきています。
なかでも、ランセットに掲載されていた報告の一つが統計調査として「とりあえずこんな症状が多くて、致死率はこれくらい」って感じにまとまっていたので、理解しやすい部分を中心にサマリーしておこうと思います。
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[原題]
Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan,China
C Huang et al. The Lancet,2020
[対象者]
2019年12月16日から2020年1月2日までに中国・武漢市の病院を受診した患者の中で、RT-PCRや次世代シークエンサーで新型コロナウイルス(2019-nCoV)が検出された男女41名
[患者について]
- 男性30名、女性11名(年齢の中央値は49歳)
- 海鮮市場を訪れたのは27名(66%)
- 糖尿病、高血圧、心疾患などの基礎疾患を有する者は13名(32%)※肥満は含まず
- 初期症状として多く見られたのは、発熱(98%)(うち38度を超えるものが78%)、咳(76%)、呼吸困難(55%)、筋肉痛や疲労感(44%)
- 全症例でレントゲン・CTで肺炎所見を認めた(両側性)
- 合併症として見られたものは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、貧血?(原文:RNAaemia)、急性心臓損傷、二次感染
- ICU入室患者は13名(32%)
- 死者は6名(15%)
- (補足1.発生源とされる海鮮市場ではコウモリなどの小動物?の違法取引も盛んに行われている。SARSはコウモリ由来の人畜共通感染症と判明している)
- (補足2.重症化について年齢・性別感で有意差はないが、基礎疾患を有している者の方が重症化、死亡しやすい傾向にある)
[治療]
[考察]
- 2019-nCoVはARDSに発展するような重度の症状やICU入室率、致死率で比較するとSARS-CoVと似た傾向がある。
- 発熱、咳、呼吸困難感のあるものは注意して経過をみる必要がある。
- 感染予防としては、N95マスクの着用、咳エチケット。また、感染者を完治させることも重要。
- 治療方法として抗ウイルス薬を使用しているが効果は証明されていない。
- (補足:抗菌薬は肺炎に対する対症療法の意味合いが強いとの報告がある)
- 2019-nCoVは上気道症状を呈するものが少なく、ウイルスのターゲットが下気道にある可能性が示唆できる。また腸管系の症状(下痢など)は少数。
- ヒト-ヒト感染については、エビデンスとしては確立できないが、2019-nCoVが効率的なヒト-ヒト感染の手段を獲得した可能性はある。
- 現在も感染者・死者が拡大しており、パンデミックの可能性も踏まえて注意深く監視する必要がある。
[原著論文]
Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan,China
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30183-5/fulltext
比較的初期の感染者についてざっと経過をまとめた報告でした。
患者情報、検査結果は詳細に記載されていますが、治療方法についての記載は浅いです。
先日奈良で報告された日本人男性の感染者の症状や臨床経過について新聞に記載されていた内容を照らし合わせると、概ねこの報告に書いてあるメジャーな所見、経過と一致しています。
他の報告と合わせると、SARSより感染力は強く、症状的には風邪やインフルエンザウイルス程度も重症化する傾向あり、致死率はSARS-nCoV>>2019-nCoV>>>>インフル(推定)
潜伏期間がやや長い(WHO:2~10日)、症状が長く続く、日に日に重症化などの点は厄介だなと思いました。
初期症状がインフルエンザウイルスや他のコロナウイルス(風邪とか)に似ていることもあり発症初期での鑑別は難しそうですが、上記の症状があれば早めに医療機関を受診しないといけませんね。
一方で、現時点では感染元がほぼ特定・追跡できる状態にあり、日本国内で生活している限りは過度の心配をする必要はないと考えられ、季節的に通常の風邪予防を続けることが重要と言われています。
今日の時点で中国国内の感染者数が約6000人、死者は132人とのこと。
(このまま推移すればSARSよりグッと低い致死率に留まることになる)
今後世界的パンデミックが起こらないことを祈ります。
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